その日、私は自転車で駅に向かっていました。
駅までの道は、歩いて行く日もあれば、バスに乗る日もありますが、その日は家を出る時間が遅れていたので、自転車を飛ばしたほうが早かったのです。
信号で止まると、目の前のママチャリの後輪の横でマスコット人形が揺れていました。
水色のツインテールの女の子で、UFOキャッチャーか何かで取ったものか、自転車のタイヤの横で揺れるには不自然なほど大きくて、思わず笑ってしまいました。
なんでこんな大きな人形をつけてるんだ。自転車の鍵をなくすのが怖いのか?
その自転車の後をついていき、途中で抜かし、いつもの駐輪場に自転車を止め、管理人のおじさんに挨拶をし、仕事に向かいました。
そしてその帰り、駐輪場で自転車を出そうとしたとき、カバンの中に自転車の鍵がありません。
私はいつも自宅の鍵と自転車の鍵は、カバンの決まったポケットに入れています。ファスナー付きの場所です。そこに自転車の鍵だけ無いということは、初めから入れなかったとしか思えない。朝私は自転車の鍵を確かにここに入れたか?
記憶がありません。
自転車が倒れないようにハンドルでバランスをとったことも、シルバー人材センターのおじさんに元気良く挨拶したことも覚えていますが、鍵をかけて、抜いて、カバンに入れた、というその動作は思い出せないのです。
ひょっとして鍵をかけずに挿したままだった?
それを誰かがいたずらで、かけて抜いて捨ててしまったのか。
いやいや、そんな悪い人がそうそういるわけはない。今日だけ別のところにしまったのかもしれない。
駐輪場でカバンの中のものを全部出し、一つ一つ丁寧に見て、上着やパンツのポケットも全てひっくり返して探しましたが、鍵はありません。
じゃあ、やっぱりこの辺に捨てられているのか。
地べたを這いつくばって探しましたが、もちろん落ちていませんでした。
仕方なく愛車ラッキー号を駐輪場に残して歩いて家に戻りました。
思えば、朝他人の自転車の鍵が気になったのはこの前触れだったのでしょう。
私はあの時、自転車の鍵を無くさないようにこんな大きなマスコットをつけてるの~?と笑いましたが、何故そのすぐ後で、自分の自転車の鍵に気を配らなかったのでしょう。(急いでいたから)
神様はこういう形でも警告してくれるのです。
目にするもの、気になったこと、一つ一つに意味があると思わざるをえません。
幸い鍵は自宅にスペアがありました。
スペアキーあってよかった。
辰年の根付けが付いてたので10年前に使っていたヤツです。