結縁灌頂の初日にのみ行われる「庭儀結縁灌頂三昧耶戒」
結縁灌頂に先立ち、受者を代表して「乞戒師(こっかいし)」が、大阿闍梨様より三昧耶戒を授かる儀式です。「仏さまのいのちと、私たちのいのちは本来一つである」という真言密教の根本を授かります。
10月1日、8時からのこの儀式に間に合うように福智院をチェックアウトしました。
見学だけだと思っていたら、この後「どうぞ皆様もお参りください」と、左側の薦を敷いた階段から金堂の中にあげていただいて、脇間と言っていいのでしょうか、ちょうど大阿闍梨様を真横から見る場所に座らせていただけました。
目の前です。近いです。大感激です。
そしてその後の本番結縁灌頂、これは私が今まで「聞いた話」「読んだ話」と少し違っていたので、2018年10月バージョンということでご参考に。
高野山も混雑緩和のためにいろいろ工夫されているのだと思います。(混み具合で対応も違うようです)
初日の第1班の入場時間は10時30分ですが、20分前には列ができていました。
すぐその後ろについて、30番目くらいには並べたと思います。数えてないので不確かです。
じきに促されて金堂に上がり、お堂の外(縁側)で3列になって、お坊様からの説明や注意事項を聞きます。(その時に2列目の前のほうだったので、全体の人数の中では前よりだったと思います)
注意事項というのは、携帯電話の電源を切る、両手をつかうので荷物は持たない(肩から下げるか背負う。外のテントに預けることも可能)、正座は無理してしなくていい、金堂の中は暗いけど僧侶がたくさんいるから心配しないでいいですよ、どうしても外に出たくなったらその待機している僧に声をかけてくださいというような話でした。
印象的だったのは「金剛合掌」と「御影堂」のお話です。
まず、合掌については「みなさんは両掌をピッタリと合わせてください。手のひらの中を膨らませたり(蓮華合掌)、指を組むように重ねる合掌(金剛合掌)は、修行を積んでいる者の合掌です。皆さんは一般の人ですから、ピッタリと手を合わせる合掌をしてください」と強めに言われました。
私は、真言宗では金剛合掌がより深く強く仏さまと結びつく合掌だと聞いていたので、たまにやっておりました。恥ずかしい。聞けて良かったです。
御影堂の話は「御影堂の中には、存命中の弘法大師様のお姿を真如親王が写し取った肖像画が保管されています。この肖像画を写したものが普段私たちが目にする弘法大師様の絵で、原本はたった一つ御影堂にあり、これが高野山で最も大切なものです」「それなのに三鈷の松だなんだと、御影堂にお尻向けて必死に松の葉を探しているのは大変無礼なことですよ」と笑いを交えつつもチクリとお説教されました。
これから高野山に行く人はお気を付けください。(私もな!)
時間になると、ほの暗い金堂の中に先頭の人から順番に入っていきます。私が入ろうとしたところで止められて、新しい列が作られました。
そう、なんとここでも一番前に座らせていただけたのです。感動~。
「前だった!一番前だった~!!」と喜ぶのは厭らしいとわかってるんですけど(笑)、日頃からお芝居、歌舞伎、宝塚、なんでも「舞台に近くてよく見えるのが良席」とDNAに刷り込まれています。
目の前に阿闍梨様がいて、弘法大師様のお姿もはっきり見えて、大感激です。
自ずと背筋が伸びます。これが後ろのほうだったら、老眼厳しい昨今、暗い中では阿闍梨様のお声しか聴けず、ここなら目立たないよね~と足も崩したと思います。無理して正座しなくていいってお坊さんも言ってたし~。
でも最前列です。正座を続けました。今回の高野山で一番長い正座でした(当社比)。
ここでは合掌して「南無大師遍照金剛」のご真言をひたすら唱えて、阿闍梨様からの授戒の儀式、大師協会のとほぼ同じで、懺悔文や菩薩十善戒を唱和しました。
その後、ゆっくり立ち上がって金堂内を移動。
結縁の儀式は「学生から先に行います」ということで、黒の僧衣の人(高野山の学生)たちが屏風の奥に入っていきます。
一般の私たちは、待ちスペースで10人くらいずつの横列を作っていきました。(これもちゃんとは数えていないので確かではありません)
待っている間にもう一度注意事項。ここでは「眼鏡をかけている人はすぐ取り出せるところにしまってください」というのが付け加えられました。
紙で目隠しをしますが、目隠しを取った後すぐに見るものがあるから、目隠しを取ったと同時にサッと眼鏡をかけてほしいとのことでした。
私は眼鏡でもコンタクトでもない(老眼気味だけど)のですが、両隣の人は眼鏡で胸ポケットにしまったり首元に掛けたりしていました。
隣の部屋からは「オン サンマヤ サトバン」のご真言が繰り返し聞こえてきます。
オン サンマヤサトバンは三昧耶戒真言で、辰年の私の守り本尊普賢菩薩の真言と同じです。
学生さんたちが終わったら、一般の人たちが2列ずつ屏風の奥に呼ばれました。
私はその2回目で入れたので、やはりかなり前のほうだったと思います。
屏風の奥にはパイプ椅子があって、先の10人は立って列を作り、後ろの10人は椅子に座って待ちます。
立っているときに印の結び(右手を上にして両手を組み、両方の中指を立てる)を確認し、この中指の間に華(葉?)を挟みます。
そして、目隠しをされた後は、その中指を前の人の背中につけて、真言を唱えながら歩く。という話でしたが、私は、目隠しをされた直後に前の人の存在が消えて、気づけばお坊さんがずっと横で両肩を支えて歩いてくれていました。
何が失敗だったのかわかりません。目隠しされる前までは中指ついていたんですけど。最初の一歩が小さすぎたのでしょうか。←ありえる。
真言はずっと唱えていましたが、それほど歩かないうちに「はいこっちです」「次はこっちです」ちょこちょこ方向転換し、「つま先がついたところで立ち止まってください」と、わりとすぐに曼陀羅の前につきました。
曼陀羅の前というのは、見えているわけではなく事前情報からです。
その事前情報では「目隠しされて見えない状態で、前の人の背につけた指をたよりに、ひたすらご真言を唱えてぐるぐると長い間歩き続ける」とあったので、もう少し歩くと思っていましたが、1、2分くらいしか歩かなかったと思います。
ひょっとして私だけですか? 指が外れたから??
(このあたり今回参加された方に聞いてみたいものです)
ともあれ、曼陀羅の前で中指に挟んだ華を落とすと、右手からとてもいい声で「大日如来!」の声がかかりました。
さっと目隠しを取られると曼陀羅の中央に、華が二つ!
2つ??
「この右側の華があなたの投げた花です。大日如来様とご縁が結ばれました!」
おめでとうございます!という雰囲気でしたが、
二人いっぺんに投げてるのか~(笑)
これは意外でした。
時間短縮のためとはわかりますが、儀式としてはどうなの?とか思ったりして。すみません。
ちなみに、投げた華はみんな大日如来の上に落ちたことにされます。
弘法大師様が中国で恵果僧都から受けた結縁で両部界曼荼羅の大日如来の上に落ちたという故事に習って、ポトリと落ちた華をサッと移動させてくれているそうです。ありがたいことです。
その後、やや急かされるように次の場所に案内されると、①から⑩?まで番号のついた個別面談ブースが並んでいます。お役所みたい!
「あちらの3番に行ってください」と言われてあたふた行くと、介添えの若いお坊さんが椅子を引いてくれて、座ると目の前にとても優しく美しいお顔をした阿闍梨様がいました。眼鏡をかけていてちょっと仁左衛門様に似ています。
つい見とれていたら、介添えのお坊さんから頭に重いものが載せられました。後でわかりましたが冠です。
いろいろな人が「頭に水をかけてもらう」と書いていたので「髪の毛が濡れないように鍋でも載せるのかしら?」とか間抜けな考えが閃いたのですが、そんなわけありません。(そしてそんなことをずっと考えたわけじゃないですよ。0.1秒で閃いてしまっただけですよ)
優しい阿闍梨様から五鈷杵を手に持たせていただいて、大日如来とご縁を結びましたという意味の印を結びます。そして、冠を被った頭に聖水を掛けていただきます。
「これで大日如来様とご縁が結ばれました」
と、介添えのお坊さんが、サッと鏡を差し出します。
「これが今日、仏様とご縁を結ばれたあなたのお顔です」
思わずニコッと顔を作ってしまいました。電車の窓などで無防備な自分の顔を見せられた時は本当に怖いですからね。
でも、自分でもとてもすっきりした良い顔をしていて、感動しました。
ついでにその時改めて、ああ、頭に乗っかっていたのは冠なのねと理解しました。
阿闍梨様から「これはお守りです」と、お守りと大日如来の上に落ちた(ことにしていただいた)投華の包をいただきました。
この時には感極まっていて目がウルウル。「ありがとうございます」と何度も何度も頭を下げました。
その後、出口までたくさんの仏画の前を通りましたが、お賽銭を上げるということを怠りました。
なんか、そんな感じではなかったのです。←言い訳
わりとみんなぞろぞろ出て行く中で、お賽銭を上げて拝んでいる方がいて、慌てて私も財布を探りましたが、カバンの下に入っていてすぐに小銭入れが出できません。長財布ならすぐに出ます。
そこで、いつもお世話になっている薬師如来様の前で1000円、同じく弘法大師様の前に1000円、お札を出しました。
まとめて出した感じだけど、細かいことはいいよね。だって私は仏さまとご縁を結んだのだもの~的に舞い上がっておりました。
舞い上がったまま金堂を出ると、出口のところでお坊さんに「おあずかりします」と言われて、きょとん。
何??何をあずかるって??
全くわからずポヤンとしていると、目隠しに使った紙や阿闍梨様にいただいたお守りをくださいと言います。
目隠しには大日如来が印刷されていましたが、その横に梵字の三昧耶印を朱印で押してくれました。
そして、この写真のような立派なファイルに、きれいにしまってくれました。
上から、
目隠し
投華包み
結縁灌頂血脈
結縁灌頂御守り
です。
そして外に出て一息ついたら、ふと、一瞬、本当に一瞬ですが「2000円もったいなかったかな?」と思ってしまいました。 ごめんなさい。自分でも呆れるケチくさい女です。「小銭入れをすぐ出せるところに入れておけば、他の人たちみたいに100円や10円はいっぱい持っていたのに」と。本当に一瞬ですよ。0.1秒閃いてしまったのです。
それを頭で打ち消しながら、切ってたスマホの電源をいれたら、なんと!!
私は、ココナラというフリマサイトで吉方位鑑定を販売しているのですが、まさに
結縁灌頂を受けている最中に1件購入されていました。ちょうど2000円。
ビックリしました。めったに売れないヤツなのに。笑
お金のことなど気にするな!といわれた気分でした。
ちなみにこれです。
ココナラ - みんなの得意を売り買い スキルのフリーマーケット
さて、長々と初の高野山体験をつづってきました。(特にこの回は長すぎ)
お付き合いいただいてありがとうございます。
3泊4日の高野山、台風の最中なのに個人的には何も被害を受けず、むしろ良いことばかりでした。
(被害を受けた方には、大変申し訳ありません)
前回思わせぶりに「最大のラッキーが」と書きましたが、ここまでお読みになって、阿闍梨様のこと? 2000円お賽銭あげたら同額かえって来たこと? とか思われたかもしれません。
違うのです。
私の「最大のラッキー」それは、
奥の院でも徳川霊廟台でも、地元の人から「結縁灌頂にキャンセルがたくさん」と何度も聞いて、ふとひらめいて、朝、当日券の発売所でダメモトで尋ねました。
「ぴあで事前購入しているチケットは第3班のチケットなのですが、もしも第1班にキャンセルの空きが出ているようでしたら変更してはいただけませんか」
第1班と第2班はチケットぴあの前売り時に完売していました。しかし、やはりキャンセルがあったからでしょう。あっさりと「大丈夫ですよ」と変更していただけたのです!
これが私にとってはかなりの大ラッキー!!
なぜなら10時30分開始の第1班でも、終わって宿坊に荷物を取りに行ったりしていたら、帰りのケーブルカーの時間までさほど余裕がないことに気付いたのです。
11時50分からの3班で入っていたら、帰りの飛行機に間に合わなかったかもしれない!!滝汗!!
第1班の前のほうで入場できたから90分ほどで出て来ましたが、「後ろになればなるほど待たされる」とか「以前は2時間3時間待ちも当たり前だった」などと話す声も聞こえてきました。
変更してもらった時はそこまで考えていなかったのですが、安易な計画で飛行機を取っていた私を弘法大師様が救ってくれたのだと思いました。
本当にありがとうございます。
今回の旅行でお世話になった高野山の皆様にも、心からお礼を申し上げます。
また必ず行きます。本当に聖地でした。
次は、結縁灌頂の日の夜に泊まるように計画します。